インプラントだけじゃない!歯を失ったときのもうひとつの選択“歯の移植”

歯を失ってしまったとき、治療法として真っ先に思い浮かぶのは「インプラント」や「ブリッジ」「入れ歯」かもしれません。
しかし、実はそれだけではありません。条件が整えば、**「自分の歯を移植する」**という方法が可能な場合があります。
この“歯の移植(自家歯牙移植)”は、自分自身の歯を使うため、体になじみやすく、自然な噛み心地を取り戻せる可能性があるのが特徴です。
今回は、歯の移植について、歯科的な視点と医学的背景の両面から詳しくご紹介します。
自家歯牙移植とは?
自家歯牙移植(autotransplantation)とは、主に「親知らず」や「使っていない奥歯」などを抜き、
歯を失った部分へ移し替える治療法です。
人工物ではなく、自分の歯を利用するため、拒絶反応が起こりにくく、生体親和性が非常に高いことが最大の特徴です。
歯根の周囲には「歯根膜(periodontal ligament)」という薄い膜があり、この膜が新しい場所で再び骨と結合することで、
移植した歯が“自分の歯として”機能するようになります。
どんなケースで移植ができる?
すべての方に適応できるわけではありませんが、以下のような条件が整っていると可能性が高まります。
移植が向いているケース
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抜歯が必要な親知らずや、使われていない奥歯がある
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歯を失った部位の骨量が十分に残っている
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歯周病が進行していない
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全身的に健康で、治癒力が保たれている(特に若年~中年層)
適応が難しいケース
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糖尿病や骨粗しょう症などで骨の再生力が低下している
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強い歯周病により骨が吸収している
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移植に使える歯が根の形態的に複雑・脆弱
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喫煙習慣や免疫力低下がある場合
移植は外科的な処置と根管治療の両方が関わる高度な治療であり、
歯科的だけでなく医科的な視点(全身の健康状態)も重要になります。
インプラント・ブリッジとの違い
| 治療法 | 特徴 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| インプラント | チタン製の人工歯根を骨に埋め込む | 噛む力が強い・審美性が高い | 手術が必要・費用が高い |
| ブリッジ | 両隣の歯を削って橋渡し | 保険適用・短期間で可能 | 健康な歯を削る必要がある |
| 入れ歯 | 取り外し式の人工歯 | 安価で簡便 | 違和感・ずれやすさ |
| 自家歯牙移植 | 自分の歯を移植 | 生体適合性◎・天然歯の感覚に近い | 条件が限られる・外科処置あり |
インプラントのように人工物を使わず、ブリッジのように他の歯を削らない。
「できる限り自分の歯で噛みたい」という方にとって、非常に自然な治療選択肢です。
治療の流れ
① 精密検査・診断
レントゲンや歯科用CTで骨の厚みやドナー歯の形、位置関係を三次元的に把握します。
これにより、移植の可否や成功率を正確に判断できます。
② ドナー歯の抜歯
親知らずなどを丁寧に抜歯します。
この際、歯根膜を損傷しないことが非常に重要で、成功率を大きく左右します。
③ 受け入れ部位の形成と移植
移植先をドナー歯に合わせて整え、抜いた歯をすぐに移植します。
乾燥を防ぐため、できるだけ短時間で行うことがポイントです。
④ 固定・根管治療
ワイヤーやレジンで数週間固定し、歯が骨に落ち着いたら根の治療を行います。
その後、仮歯で経過観察などし問題なければ、被せ物(クラウン)で最終的に補強します。
成功率と長期予後
近年の研究では、自家歯牙移植の成功率は**80〜90%**と報告されています。
特に、
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若年者
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歯根膜の保存状態が良い
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感染コントロールが十分
な場合には、長期間安定した噛み心地が得られます。
一方で、感染や強い咬合力が加わると歯根吸収を起こすことがあるため、定期的なフォローアップが必須です。
医科的な視点から見る「歯の移植」
歯の移植は、医学的に見ても非常に興味深い治療です。
歯根膜は“生きた組織”であり、骨と歯をつなぐ特殊な結合組織です。
この歯根膜が新たな場所で再び血流を得て生着するという現象は、臓器移植の縮図のような側面があります。
また、最近では医科の再生医療技術(PRP:多血小板血漿など)を応用し、
骨や歯根膜の再生をサポートする取り組みも進んでいます。
糖尿病や骨粗しょう症、免疫疾患をお持ちの方では、
骨形成能力や血流が影響するため、内科的な視点からの全身管理も重要です。
まさに、歯の移植は“口の中の再生医療”といえるでしょう。
移植後のケアと注意点
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固定中は硬いものを避け、柔らかい食事を心がける
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指導を受けながら、移植部を避けてブラッシング
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禁煙と十分な睡眠で治癒促進
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数か月おきのレントゲン検査と噛み合わせチェック
これらを守ることで、長期間安定した機能を維持できます。
定期的なプロフェッショナルケアとメンテナンスが欠かせません。
しぶや歯科医院の取り組み
富士見市・鶴瀬駅近くのしぶや歯科医院では、
CTによる三次元診断を行い、保存治療を重視した治療方針を採用しています。
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「親知らずを抜くと言われたが、活用できないか知りたい」
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「インプラントに少し不安がある」
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「できる限り自分の歯を残したい」
といった方には、ぜひ“歯の移植”という選択肢を知っていただきたいと思います。
患者さま一人ひとりの状態を丁寧に診断し、最適な治療法をご提案いたします。

まとめ|自分の歯で再び噛める喜びを
歯を失ったとき、インプラントや入れ歯だけが選択肢ではありません。
条件が合えば、自分の歯を生かして再び噛める「自家歯牙移植」が可能です。
自分の体を生かす“再生型の治療”として、
医療技術の進歩により今後さらに注目が高まっていくでしょう。
富士見市鶴馬のしぶや歯科医院では、
インプラント・ブリッジ・入れ歯・歯の移植など、
一人ひとりの希望やお口の状態に合わせた治療をご提案しています。
📍 埼玉県富士見市鶴馬1-25-3
🚉 東武東上線 鶴瀬駅 東口 徒歩9分
🦷 ご予約・お問い合わせは右のWEB予約からどうぞ。
